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7. 「銘柄選定」実践編

有望銘柄を発掘するには、業績が大きく伸びる要素を持った企業を探すことが重要であると考えられます。なぜならば、株価は業績が伸びれば上昇する可能性が高くなるからです。そこで、本編では業績が大きく伸びた企業の事例として、「1.新商品、新サービスの投入により業績が急成長」したケース、「2.構造改革により業績がV字回復」したケース、「3.有能な経営者に率いられて業績拡大」したケースの3つのケースを、具体的な会社名を例に挙げながらご紹介したいと思います。

1.新商品、新サービスの投入により業績が急成長

「銘柄選定」必勝法にもありましたが、新商品、新サービスが大ヒット商品となることで、業績が大きく伸び、急速に成長する会社は魅力的です。

米アップル社は2007年6月29日に初代iPhoneを発売。その後世界的な大ヒット商品となり、企業業績は2007年度には売上24,578百万ドル、一株利益0.56ドルでしたが、2015年度は売上233,715百万ドル、一株利益は9.23ドルへ拡大しました。

日本企業でも任天堂(7974)は据え置き型ゲーム機Wii(2006年11月19日発売開始)が大ヒットしたことで、企業業績は2005年度に売上5,093億円、営業利益904億円から、2008年度には売上18,386億円、営業利益5,553億円まで拡大しました。

ガンホー(3765)は2012年2月20日に配信を開始したスマートフォン(スマホ)向けゲームのパズル&ドラゴンズ(以下、パズドラ)が、スマホの普及とともに売上が伸び、企業業績は2011年度に売上96億円、営業利益12億円から、2013年度は売上1,631億円、営業利益912億円まで拡大しました。

生活に密着した企業では、明治HD(2269)はR-1ヨーグルト(2009年12月1日発売開始)がインフルエンザに感染予防効果があると2012年にメディアで取り上げられたことから販売が増加し、明治HDの業績拡大を牽引。明治HDの営業利益は2011年度の202億円から、2015年度は778億円まで拡大しています。

アップル、任天堂、ガンホー、明治HDともに、業績の急拡大に伴い株価も大きく上昇しています。新商品やヒット商品に対する感度を高めて銘柄発掘を行えば、有望銘柄に出会える可能性が高まりそうです。

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2.構造改革により業績がV字回復

時代の変化や競合他社の成長に伴い自社製品の販売が減少することで、企業業績が悪化する企業は過去にも存在しました。ただ、その後大胆に事業の選択と集中を進め構造改革に取り組んだことで、業績をV字回復させた企業は魅力的です。

日立はリーマンショック後の2008年度に、急速な売上減少とリストラ費用の計上に伴い、当時として国内製造業で過去最大になる7,873億円の最終赤字を出しました。しかし、HDD事業の売却やTVの自社生産撤退、社会インフラ事業への経営資源集中により2010年度に黒字に回復し、2011年度には過去最高益を更新するまで業績をV字回復させることに成功しました。

パナソニックはTV・デジタルカメラなどの家電製品や半導体、携帯電話などの売上減少及び早期退職費用、固定資産・のれんの減損により2011年度は7,722億円の最終赤字、2012年度も7,543億円の最終赤字になりました。しかし、プラズマパネルの生産撤退や半導体の事業規模縮小など不採算事業のリストラを進める一方で、住宅や車載など法人向けビジネスの強化に注力したことで、2013年度は1,204億円の最終黒字に回復。2014年度は1,795億円、2015年度には1,933億円まで最終黒字を拡大させました。

日立やパナソニックのように、事業の選択と集中を進めて得意事業に経営資源を集中することで、売上規模に見合ったコスト体質を作り、損益をV字回復させることができます。損益のV字回復に伴い株価も改善する傾向にあり、業績が悪いときこそ、むしろ投資機会になる可能性もありそうです。

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3.有能な経営者に率いられて業績拡大

有能な経営者が強いリーダーシップを発揮し成長を続ける会社も魅力的です。

ニトリHD(9843)は創業者の似鳥昭雄氏に率いられ、家具の製造小売業態を確立し2015年度まで29期連続の増収増益を達成しました。

カルビー(2229)のCEO松本晃氏は創業者ではありませんが、伊藤忠商事、ジョンソン&ジョンソンを経て2009年にカルビーのCEOに就任後、6期連続で増収増益を達成。プロ経営者として手腕を発揮し、成熟市場の老舗企業を成長企業へと転換させることに成功しました。

日本電産(6594)は創業者の永守重信氏が仲間3人と1973年に資本金2,000万円で設立。永守社長の強烈なリーダーシップのもと、世界トップシェアのHDD用精密小型モーターや車載機器、家電向けモーターなどの伸びに加えて、M&A戦略により成長を続け、2014年度に創業41年で売上高1兆円を達成しました。

インターネット(ネット)業界では創業からまもない会社が多く、創業社長が会社をリードするケースが多数ありますが、なかでもサイバーエージェント(4751)の藤田晋氏は、ネットビジネスに対する深い理解に基づく先見性や活気ある組織を作り上げる育成力、判断を誤った時の軌道修正の速さといった点において、ネット業界随一の経営者だと言えます。ネットビジネスを知り尽くしているので経営の方向性が良く、チャレンジとイノベーションを奨励する活気ある組織が素早くビジネスを構築することによって、後発であってもいつの間にかトップクラスのサービスを提供するようになっているというのがサイバーエージェントの特徴です。新しい企業が生まれ、新しいサービスや技術、ビジネスモデルの革新が常に生まれている栄枯盛衰の激しいネット業界で、2000年のマザーズ上場以来15期連続で売上を伸ばしています。

ニトリHD、カルビー、日本電産、サイバーエージェントの4社は株価も業績拡大に伴い上昇しており、有能な経営者に資産を託すという姿勢も、有望銘柄発掘には有効になりそうです。

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まとめ

ウォーレン=バフェットやレオスキャピタルワークスの藤野英人氏など著名投資家・ファンドマネージャーには、その人なりの投資基準、成長企業発掘法があると聞きます。有望企業を発掘し、企業の中長期的な成長とともに歩むことは、投資の醍醐味だと言えます。